WARで振り返る広島カープの歴代ドラフト(2012-17)
2012年から2017年までの広島カープのドラフトをWARと共に振り返ります。
その前に、まずWARとは何のことかから話を始めます。
WARは、野球を統計学の観点から見るセイバーメトリクスの指標のひとつです。
打撃・守備・走塁・投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、あらゆる選手を同じ土俵で比べることができます。
今回はそのWARを用いて、カープのドラフト指名を受けた選手の、プロ入り通算の数字を見ながら振り返ります。
2012年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 高橋大樹 | OF | 高卒 | 0.1 |
ドラフト2位 | 鈴木誠也 | OF | 高卒 | 26.8 |
ドラフト3位 | 上本崇司 | 2B | 大卒 | -0.3 |
ドラフト4位 | 下水流昂 | OF | 社会人 | 0.4 |
ドラフト5位 | 美間優槻 | 3B | 高卒 | -0.5 |
育成1位 | 辻空 | RHP | 高卒 | 0 |
2012年ドラフトは、本指名を受けた選手が5人とも野手になっています。当時投手陣が弱かったカープにあって、投手を指名しなかったこの年は批評家から評価が低かった年でした。
WARで振り返ると何といっても鈴木誠也が指名できたのが大きかったです。WAR26.8と一人で27勝近い価値を産みだしています。リーグ屈指のプレイヤーは今後更にこの値を伸ばしていくことが予想できます。
しかしドラフトから7年が経ち、1軍に定着している選手が鈴木誠也ひとりだけなのはさびしい所です。高橋大樹は1軍と2軍を行ったりきたり、上本崇司もバイプレーヤーとして大きく試合に出場しているわけではありません。
美間は2018年に当時ソフトバンクの遊撃手だった曽根海成と、下水流は2019年に当時楽天だった三好とトレードになりました。
2013年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 大瀬良大地 | RHP | 大卒 | 16.8 |
ドラフト2位 | 九里亜蓮 | RHP | 大卒 | 8.2 |
ドラフト3位 | 田中広輔 | SS | 社会人 | 19 |
ドラフト4位 | 西原圭大 | RHP | 社会人 | 0.4 |
ドラフト5位 | 中村祐太 | RHP | 高卒 | 0.7 |
この年はカープのドラフト史に残る成功ドラフトになりました。ドラフト1位の大瀬良は怪我で離脱した2016年を除き、コンスタントにWAR2.0以上記録しています。規定投球回を達成したシーズンもプロ入り6シーズン中4シーズンあり、エースとして活躍しています。
また3年連続ショートでフルイニング出場した田中広輔を獲得。通算WARは19と、1位の大瀬良投手より高い数値になっています。2019年シーズンに連続出場記録はストップしたが、これまでの貢献度を考えると間違いなくカープ史上初の3連覇に大きく貢献した選手です。
さらに九里亜蓮もこの年のドラフト2位で指名しており、ローテーション投手2人と正遊撃手を獲得できた成功ドラフトになった。
2014年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 野間峻祥 | OF | 大卒 | 1.8 |
ドラフト2位 | 薮田和樹 | RHP | 大卒 | 2.6 |
ドラフト3位 | 塹江敦哉 | LHP | 高卒 | -0.2 |
ドラフト4位 | 藤井晧哉 | RHP | 高卒 | 0.2 |
ドラフト5位 | 桒原樹 | SS | 高卒 | 0 |
ドラフト6位 | 飯田哲矢 | LHP | 社会人 | 0.6 |
ドラフト7位 | 多田大輔 | C | 高卒 | 0 |
2014年ドラフトは高い評価をつけれないドラフトになっています。1位の野間はバイプレーヤーとして活躍していますが、レギュラーに定着できずにいます。
2位の薮田投手も2017年に15勝を挙げ、最高勝率のタイトルを獲得していますが、その後は鳴かず飛ばずです。
他の投手で期待ができそうな投手と言えば、個人的には塹江投手を挙げたいです。左の速球派の彼が今後どのくらい活躍できるかがこの年のドラフトの伸びしろだと思います。
2015年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 岡田明丈 | RHP | 大卒 | 7.3 |
ドラフト2位 | 横山弘樹 | RHP | 社会人 | -0.1 |
ドラフト3位 | 高橋樹也 | LHP | 高卒 | 0.2 |
ドラフト4位 | 船越涼太 | C | 社会人 | -0 |
ドラフト5位 | 西川龍馬 | SS | 社会人 | 3 |
ドラフト6位 | 仲尾次オスカル | LHP | 社会人 | 0.1 |
ドラフト7位 | 青木陸 | 1B | 高卒 | 0 |
岡田明丈投手を単独で入札したのが2015年です。結果として4年でWAR7.3をマークしており、岡田投手を単独入札したドラフト戦略は成功だったと言って良いでしょう。
2位の横山投手、3位の高橋樹也投手はこれまでの結果としては、1軍の戦力に立っていないことになります。
この年は、西川龍馬選手を5位で指名しています。打撃で貢献してきた西川選手は、2019年に外野手のレギュラーの座を掴んでおり、今後もWARを伸ばしていくことが予想されます。
長打率も年々伸ばしており、今後は中軸を打つ選手として活躍するのではないでしょうか。
西川龍馬選手の年度別長打率
2016年 .392
2017年 .417
2018年 .450
2019年 .453(2019年9月15日現在)
2016年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 加藤拓也 | RHP | 大卒 | 0.2 |
ドラフト2位 | 高橋昂也 | LHP | 高卒 | -0.2 |
ドラフト3位 | 床田寛樹 | LHP | 大卒 | 1.2 |
ドラフト4位 | 坂倉将吾 | C | 高卒 | -0.2 |
ドラフト5位 | アドゥワ誠 | RHP | 高卒 | 1.6 |
ドラフト6位 | 長井良太 | RHP | 高卒 | 0 |
田中正義(現ソフトバンク)、佐々木千隼(現ロッテ)のくじを外した後、カープが指名したのが当時慶應大学のエースであった加藤拓也投手。慶應からの指名、身長175cmと長身好きのカープにあって異例の指名となりました。ただ現状、一軍に大きく貢献しているわけではありません。
2位は高卒ビッグ4の一角だった高橋昂也投手。2年には先発として数試合登板経験もありますが、今季はトミージョン手術を受けて療養中。140中盤のストレートとキレのあるスライダー、フォークを投げれる左腕だけにあって、復帰が待たれる投手です。
3位の床田投手は2018年にトミージョン手術で受けたあと、今季が復活のシーズンになりました。実働1年でWAR1以上記録しており、今後も怪我がなければWARを伸ばしていくと予想されます。
4位の坂倉選手はファームの成績、そして打撃フォームの良さから期待されている捕手ですが、まだチームの貢献度としてはまだマイナスになっています。
現在、この年のドラフトで最もWARが高いのがアドゥワ投手の1.6になっています。球速も年々速くなっており、今後も伸びていくと期待しています。
2017年
順位 | 選手名 | 守備 | 学歴 | WAR |
---|---|---|---|---|
ドラフト1位 | 中村奨成 | C | 高卒 | 0 |
ドラフト2位 | 山口翔 | RHP | 高卒 | 0 |
ドラフト3位 | ケムナ誠 | RHP | 大卒 | 0 |
ドラフト4位 | 永井敦士 | OF | 高卒 | 0 |
ドラフト5位 | 遠藤淳志 | RHP | 高卒 | 0.9 |
ドラフト6位 | 平岡敬人 | RHP | 大卒 | |
育成1位 | 岡林飛翔 | RHP | 高卒 | 0 |
育成2位 | 藤井黎來 | RHP | 高卒 | 0 |
育成3位 | 佐々木健 | RHP | 高卒 | 0 |
甲子園のスター選手であった広陵高校の中村奨成選手を、中日と競合の末くじを引きあてたのが2017年ドラフトです。鳴り物入りの入団でしたが、1年目はファームで大きくつまずきました。今年も怪我で離脱する時期もあり順調とは言えませんが、打撃成績は大きく伸ばしております。
来年あたりで一軍デビューがありそうですね。
中村奨成選手のファーム成績
2018年 83試合 打率.201 長打率.299 出塁率.257
2019年 30試合 打率.263 長打率.350 出塁率.322
一軍で活躍しているのは高卒2年目の遠藤投手です。2年目ながら一軍で33試合登板し、防御率3.32(2019年9月15日現在)とチームに大きく貢献しています。WARも0.9あり、将来的にはローテーション投手としてチームを支えてほしい投手です。
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