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NPBの収益構造のラストフロンティア、放映権ビジネスについて
以前下のようなツイートをしたら、結構反響があったので、今回はNPBの放映権ビジネスについて語っていきたいと思います。
セリーグ。各球団がそれぞれでメディアと放映権の契約を結んだ結果、
— ひさもと (@hisamoto_0) January 9, 2020
協力した時よりも低額な放映権の契約になってない?
「囚人のジレンマ」じゃん。
NPBのコンテンツは素晴らしいからもっと放映権取れると思うんだよな。
— ひさもと (@hisamoto_0) January 9, 2020
143試合して、12球団とも平均2万人以上の観客を動員する化け物コンテンツなんだよ?
DAZNが巨人に支払う年間の配信料の20億は高い?安い?
そもそも、このツイートの発端は日本経済新聞の以下の記事でした。
DAZNはその前年、総額2100億円という巨費を投じてJリーグの放映権をスカパーJSATから奪い、鳴り物入りで日本市場に参入したばかり。Jリーグに続く日本攻略の最重要課題として平田に与えられたミッションが、プロ野球の配信権の獲得だった。 (中略) もちろん「実弾」も打ち込んだ。DAZNが巨人軍に支払う配信権料は年20億円以上ともされる。テレビの放映権料からすれば小さく見えるが配信権としては破格。他球団とは文字通り「ケタ違い」の金額だという。
日本経済新聞「DAZNvsスカパー プロ野球配信、仁義なき戦い NETFLIX革命(4)」(2020年4月1日閲覧)太字は引用者による
DAZNが巨人に支払うネットでの配信料が年20億円以上。これが高いと取るか安いと取るか。
正直、私は「巨人でさえ配信料は年20億円なのか…」と思いました。
記事の中に「他球団とは文字通り「ケタ違い」の金額だという。」と記載されているように、他球団とDAZNが結んだ配信料の契約は一桁(数億円)なのだと予想がつきます。
ちょっとこれだけだと規模が分かりにくいと思いますので、比較対象としてMLBのネットの配信料はどのくらいなのか見てみましょう。
海外からネットで視聴するのには、MLB.TVで見ることが出来ます。このMLB.TVはMLBの参加にあるMLB Advanced Mediaという会社が一括で管理しています。
下の日本経済新聞は2014年のものなので、今から6年前なのですが、既にMLB.TVは莫大な利益を生み出していて、各球団の分配金が年間2,000万ドル(約20億円)に達していると書かれています。
また、大リーグには「MLB.COM」という公式サイトからの収入もある。00年に立ち上げ、開設からの4年間は各球団が年100万ドルずつ運営に必要な資金を出す予定だったが、3年目あたりから黒字に転換。特に、大リーグの全試合を視聴できる「MLB.TV」が莫大な利益を生み出している。それを原資とした各球団への分配金が年間2000万ドルに達するともいわれ、放映権料と同じく「金のなる木」だ。この事業モデルでも、日本のプロ野球ははるかに後れをとっている。
日本経済新聞「日米球界、テレビ放映権料の明暗が招いた年俸格差」(2020年4月2日閲覧)太字は引用者による
6年前で既にNPBで一番ネットの配信料が高い巨人と同額の分配金をMLBの各球団は貰っていたわけです。
今ではもっと高額な分配金を貰っていてもおかしくありません。
なので、私はNPBのネットの配信料はまだまだ少ないと考えています。
別の表現をすると、NPBの球団の配信料はまだまだ伸びるポテンシャルがあると思います。
NPBの各球団がそれぞれでメディアと配信権を結ぶことで起こる囚人のジレンマ
少し話が変わるのですが、ゲーム理論(経済学の考え方の一つ)の中に「囚人のジレンマ」という言葉があります。
これは、お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなるというジレンマです。
例を出しながら、見ていきましょう。
共同で犯罪を犯したと考えられる囚人Aと囚人Bがいます。
下の3つのルールがあった場合、囚人Aと囚人Bはどういう選択肢を取れば、お互い良いのか考えてみましょう。ただし、囚人Aと囚人Bはお互い隔離されていて、会話ができないものとします。
【ルール】
・2人とも黙秘なら証拠不十分で、囚人A・囚人Bとも懲役2年。
・1人が自白し、もう1人が黙秘だった場合、自白した方を調査に協力してくれたためその場で釈放、黙秘していた方を懲役10年。
・2人とも自白した場合、囚人Aと囚人Bともに懲役5年。
囚人A・囚人Bともの利益を考えるならば、互いに黙秘して懲役2年を受けるのが最善です。
しかし、現実はそうはいきません。
2人の囚人A・Bがそれぞれ自分の利益のみを追求している限り、「互いに黙秘」という結果ではなく「互いに自白」という結果となってしまうのです。これがジレンマと言われる所以です。
同じようなことがNPBでも起こっています。
パリーグはパシフィックマーケティングという会社が6球団の放映権を一括で管理していますが、セリーグの6球団はそれぞれが各メディアと放映権を結んでいます。ネットでの配信権も同様です。
これでは、NPBのブランドが小出しになっているだけで、価値が半減されるだけです。NPBは12球団揃って、初めて真の価値が生まれるプロリーグだからです。
MLBの配信権が高いのも、MLBが全30球団の配信権を一括で管理しているからです。
囚人のジレンマでいうと、MLBは囚人A・囚人Bとも黙秘している状況なんですね。
NPB、特にセリーグはそれぞれが自白して全体の利益を損なっている状況です。
全12球団の放映権、および配信権をNPB全体で一括に管理して、NPBのブランド力を強化し、利益を増やしていくことを強く望んでいます。
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