3連覇したプロ野球の球団~西鉄ライオンズ~

3連覇したプロ野球の球団~西鉄ライオンズ~

3連覇したプロ野球の球団を振り返る企画を始めます。

第一回目は西鉄ライオンズです。

西鉄ライオンズは、現在の西武の前身で、1956年~1958年の期間に3連覇を記録しました

1954年に初優勝した西鉄でしたが、翌1955年は南海に優勝を奪われ、1956年もシーズン終盤まで南海に首位を走られていました。

そういう状況のなか、どのようにして西鉄は3連覇を達成したのか振り返ります。

達成年度 : 1956年~1958年

西鉄王朝を作り上げる前の話

西鉄黄金期を語るうえで欠かせないのが中西太選手です。

1951年の甲子園大会で大活躍した中西選手は毎日オリオンズの入団が決まりかけていました。しかし同郷のよしみで三原監督があざやかに獲得に成功します。

西鉄はこの中西選手の参加と稀代のスターだった大下弘の移籍でチームの骨格を作り上げていきました

1956年

前年、南海に優勝を許した西鉄ライオンズ。

打倒南海のため西鉄が行った補強選手は、畑隆幸(小倉高)・西原泰治(岸和田高)・稲尾和久(緑ヶ丘高)・三竿徹(倉敷高)の4人の投手と田辺義三(桐生高 捕手)と片山敏彰(倉敷高 内野手)の合わせて6人。

この中で一番評価が高かったのは「高校球界左腕三羽ガラス」と言われた畑隆幸選手でした

この年、21勝を挙げる稲尾選手は意外にもほとんど注目されていませんでした。(注1)

シーズンが開幕すると、西鉄は開幕5連勝を飾ります。

その後も順調に勝ち星を増やしていきましたが、1956年シーズンは西鉄の更に上を走るチームがいました。

南海ホークスです。

8月16日の時点で首位南海と2位西鉄のゲーム差は、6.5ゲームまで開きました。

しかし、9月に入り南海が調子を落とし、反対に西鉄が好調であったため順位が逆転!

最後までせりましたが、96勝51敗7分(南海は96勝52敗6分)で西鉄がチーム2度目の優勝を飾ります。

三原監督の優勝後のコメント

(前略)ところが絶対セーフティー・リードを保っていた南海が九月中旬からがっくり力を落し、この辺から西村がカムバック、島原、稲尾らが私の命ずるあらゆる酷使に耐えてよく調子をあげてくれた。まったくこの優勝はこれら三投手と今季を通じて打ち続けた豊田の長足の進歩によるもので、これに刺激された中西が後半打出し、とてもだめだ勝てないと思ったその時にふしぎにも勝利への道が開けてきた。「西鉄二度目の優勝」『読売新聞』1956年10月7日

上記の三原監督のコメントから如何に1956年の西鉄優勝が薄氷の勝利だったのかが伺えます。

打撃成績

この年、中西太は4年連続で本塁打王を受賞、また打点王、最高殊勲選手のタイトルを受賞しました。

また豊田泰光はこの年NPB史上初のショートストップで首位打者のタイトルを獲得します。

豊田選手以外の日本人遊撃手の首位打者は、プロ野球歴代でも西岡剛(2010年)と坂本勇人(2016年)だけです。

ただこの頃からチームの核であった大下弘の打撃に陰りが見え始めます。西鉄王朝の始まりと衰退が見え隠れしている時期ですね。

背番号選手名試合打席打数得点安打二塁三塁本塁打点盗塁盗塁刺犠打四球敬遠三振失策打率出塁率長打率OPS年齢
7豊田泰光14862952990172281212703113157655940.325.412.491.90321
9河野昭修153569497651342332381413274306511.270.330.340.67026
6中西太137523462741502752995151215417708.325.397.593.99023
27関口清治1505044665511925131373369241644.255.295.448.74331
25高倉照幸148471433601121559583594311559.259.311.379.69022
54玉造陽二1364433905511617713318166441584.297.370.385.75520
5仰木彬124438388529419110332310173007525.242.300.374.67421
3大下弘1153823473190142452345215314.259.304.346.64934
12日比野武1242852531859601273412180305.233.284.269.55336
2中谷準志9321519415386031642571227.196.246.273.52038

 

投手成績

この年の西鉄のエースは島原幸雄投手です。

74登板はこの年最高、歴代でも14位の記録です。373投球回という記録も今では考えられない数字ですね。

また稲尾投手も高卒ながら262イニングを投げ、21勝し新人王を受賞しています。もう色々凄いです。

背番選手名登板先発完了完投完封無四勝利敗戦投球回安打本塁四球死球三振失点自責防率WHIP年齢備考
18島原幸雄74402115312511373.2225711472537076561.350.9123
24稲尾和久612225631216262.115327381822147311.060.8619新人王
20西村貞朗622922840217246.116266131633060471.710.9122
15河村久文4625125211812201.215176771233070572.541.0823
23畑隆幸201715407490.2553390621024171.681.0419
21川崎徳次287142102385814272320026222.331.2735
13北原啓15341102039372150211018153.461.3320
38若生忠男20150000234.2301220372017112.831.519
19佐川守一16330000023.220012019001093.381.3521
16大津守52200002141814061013117.071.5725
17長坂衛7210000110.111030410332.451.3522

 

1957年

昨年優勝し前評判が高かった1957年の西鉄ライオンズ。

しかし前年25勝した島原が足首を痛め、西村、河村と第一線級の投手も不調でした。

そんな中、大車輪の活躍を魅せたのが稲尾和久投手です。

前年の新人王はこの年更に飛躍し、35勝6敗というとんでもない数字を残しています

この年に打ち立てた1シーズン20連勝という記録は、2013年に田中将大(現ヤンキース)投手がシーズン21連勝をし塗り替えるまで日本記録でした。

 

打撃成績

大下弘はこの年の日本シリーズで最優秀選手に選ばれました。

背番選手名試合打席打数得点安打二塁三塁本塁打点盗塁盗刺犠打四球敬遠三振失策打率出塁率長打率OPS年齢備考守備
7豊田 泰光12855046392133268185924101270064330.2870.3810.4950.87522ベスト9(遊)128 (一)1
6中西 太1325384868415431324100156049671160.3170.3810.5410.92224ベスト9(三)130 (二)15
25高倉 照幸12044941276115253113917672705350.2790.3230.4340.75823(外)116
3大下 弘111430395441212324552442674340.3060.3540.4050.75935ベスト9(外)110
27関口 清治1164183674111017812653763934850.30.3690.4880.85632(外)109
9河野 昭修131413373279293128571621063130.2470.2890.2950.58427(一)131 (二)5 (三)1
47和田 博実111359322326910173515102308160.2140.2750.3170.59220(捕)111
54玉造 陽二11728225028597311012882305240.2360.3030.30.60321(外)94
5仰木 彬962462112854626234452604990.2560.3460.3890.73422(二)94 (遊)1
28田中 久寿男95179171184261421450303750.2460.2750.3630.63822(一)59 (外)21 (三)18

投手成績

背番選手名登板先発完了完投完封無四勝利敗戦投球回打者打数安打本塁四球死球三振失点自責防率WHIP年齢備考守備
24稲尾 和久6833272053356373.214191309243147672881272571.370.8520MVP ベスト9(投)68 (一)1
15河村 久文55291353017822591882720077341273071562.241.2124(投)55
38若生 忠男441912100911163.166557211808031354054402.21.2120(投)44
18島原 幸雄311776321351405615121105373811041251.611.0524(投)31
20西村 貞朗299132005587355322802260524033262.691.2223(投)29 (外)2
23畑 隆幸301642002479.2356298755434593044364.051.4820(投)30 (外)1
32西原 恭治22521012143.2179156341182311015122.451.1920(投)22
26鵜狩 道夫18380000140.1179158391161261014112.411.3621(投)18 (一)2 (外)1
21川崎 徳次7050000118.1756615180700431.421.2536(投)7
13北原 啓21000001733276260600445.141.7121(投)2
19佐川 守一502000005.226225140400334.51.5922(外)6 (投)5

 

1958年

西鉄はこの年もパリーグを優勝し、見事3連覇を達成しました。

日本シリーズでは巨人と対戦し、3連敗後の4連勝。

見事日本シリーズ三連覇を達成します。稲尾和久は日本シリーズ4勝という新記録をあげました

7回戦62イニングのうち7割に当たる47イニングを投げ抜くさすがの鉄腕っぷりを見せます。

ひとつの日本シリーズで4勝を挙げたのは、稲尾投手以外には杉浦忠投手(南海)しかいません。

打撃成績

背番選手名試合打席打数得点安打二塁三塁本塁打点盗塁盗刺犠打四球敬遠死球三振失策打率出塁率長打率OPS年齢備考守備
27関口 清治12548143954121231167788233127340.2760.3290.4420.77133ベスト9(外)125
6中西 太1264694046112719123848906010359170.3140.4070.5370.94425ベスト9(三)105 (一)23 (二)8 (外)2
7豊田 泰光1114583997210316313431186501165270.2580.3420.4110.75323(遊)111
22玉造 陽二1243723344384175024105727014240.2510.3090.3320.64222(外)120
47和田 博実1183693342871121636641414246140.2130.2530.3080.56121(捕)118
25高倉 照幸1123453084585161530155624076630.2760.3420.3830.72524(外)103
5仰木 彬115331296385910022710310220365110.1990.2620.2530.51523(二)111 (遊)1
9河野 昭修11529927820566001803713015440.2010.240.2230.46328(一)112
28田中 久寿男94254234235810262585014056280.2480.3040.3850.68923(一)57 (三)30 (外)23
3大下 弘6221219919446211013112101930.2210.2650.2860.55236(外)56 (一)2
45花井 悠9719817719434111103514012310.2430.3020.2940.59626(外)67
8滝内 弥瑞生9317315612318219535110041110.1990.2510.2950.54623(二)46 (遊)26 (三)24 (一)5

投手成績

背番選手名登板先発完了完投完封無四勝利敗戦投球回打者打数安打本塁四球死球三振失点自責防率WHIP年齢備考
24稲尾 和久723135196433103731432132526987643342074591.420.9221MVP ベスト9
15河村 久文52317620141122089279817376881226174632.581.125
18島原 幸雄4315911111714659054312463241001053432.651.0725
38若生 忠男44171110055120.249741783259121058052463.421.1821
20西村 貞朗391610111710113.2472420966421692041352.761.2124
23畑 隆幸241443016294.2385335715422622034262.461.1921
34村山 泰延286101012065.226125261470521028243.271.0420
32西原 恭治12030000112.2605116051800874.851.6621
33有吉 洋雅404000011037365101300321.80.522
48山野本 忠志705000007.230255030700311.131.0420

 

西鉄王朝のその後の話

1959年に西鉄王朝の中心選手だった大下弘が引退します

また同年、西鉄を3連覇に導いた三原監督も退団。また主砲中西太も左手首に腱鞘炎を患い満足に打撃が出来なくなります

1962年には豊田泰光がトレードで移籍。

野武士打線と呼ばれた選手が次々と西鉄を去っていき、王朝の土台となった打線の強みがなくなっていきます

そんな中で、チームを支えたのが鉄腕稲尾和久投手です。

1961年にはシーズン42勝という日本記録を作ります。

この記録は現在でも破られていません。おそらく破られないでしょう。

また池永正明もエースとして台頭します。高い投手陣で1967年・68年とパリーグ2位になります。

1969年に稲尾和久が引退、「黒い霧事件」でエース池永が退団すると西鉄ライオンズは戦力が著しく低下し、それ以降西鉄が復活することはありませんでした

順位表

チームOPSとリーグ平均OPSの比較

チーム防御率とリーグ平均防御率

関連記事

広島県総合グランド野球場から振り返る広島カープの黎明期

2020年4月27日

NPBのドラフトは上位の球団の方が有利とは本当か?

2020年4月15日

今だから言える。ドラフト当時2位で高橋礼投手に行くのは高すぎると思ってた【2017年ドラフト】

2020年3月16日

関連書籍

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。