トヨタの販社再編から見る国内市場の縮小
トヨタ自動車は、経営危機に見舞われた1950年に、製造部門と販売部門を分離する工販分離に踏み切りました。
分離した販売部門はトヨタ自動車販売(現在のトヨタ店)となり、販売の神様と称された神谷正太郎が初代の社長として就任しました。
現在、トヨタ販売会社は4つの販売チャネル(トヨタ店・トヨペット店・カローラ店・ネッツ店)に分かれています。
この4つの販売チャネルでは、これまで客層ごとに分かれそれぞれ取り扱っている車が異なっていました。
しかし2020年5月に、これまでトヨタが「カローラ」「ネッツ」など4系列のチャネルごとに区別していた販売車種の違いをなくし、全店で全車種を販売ができるように統一します。(引用1)
何故、トヨタ自動車は全店で全車種を販売できるように統一したのでしょうか。
トヨタ自動車は24日、4つの販売系列ごとに分かれている商品体制について、全店での全車種併売を2020年5月に前倒しすると発表した。「トヨタ店」や「カローラ店」など系列の客層ごとに専用車を用意してきたが、併売時期を最大で5年早める。販売店5000店舗で商品を統一して、顧客の利便性を高める。
(引用1)日本経済新聞 『トヨタ、全店での全車種併売を20年5月に(2019/6/24)』
実はこの全車種併売をにらんで、現在トヨタ系販社の合併が相次いでいます。(引用2)
これまで取り扱っている車種が異なるため、販売チャネルが分かれていましたが、全車種併売できるようになり販売チャネルを分ける必要がなくなったからです。
販社再編で余った人材は配置転換、またはリストラしていくことでしょう。
トヨタ系販社のKTグループ(横浜市)は5月、トヨタカローラ横浜やネッツトヨタ湘南など傘下の4販社を合併する。 (中略) トヨタ系では愛知県のATグループ(名古屋市)も傘下4社を統合することを検討するなど、各地で取り組みが進む。
(引用2)日本経済新聞 『車販社再編に第2の波 トヨタ系、相次ぎ合併(2020/2/10)』
販社再編の動きは、トヨタ自動車だけではありません。ホンダや三菱自動車も販社再編を予定しています。
ホンダは直営の販社を8社減らし、三菱自動車は西日本三菱自動車販売と中部三菱自動車販売の統合します。
自動車メーカー各社の販社再編の背景には、国内の新車販売の市場の縮小があります。(引用3)
少子化の影響で日本国内の総人口は10年連続で減少し、今後もどんどん人口は減少していきます。
1台の車を複数人で使うカーシェアリングの利用者も徐々に広がってきました。
そういう新車販売に対して負の要因を考慮して、日本自動車販売協会連合会は2040年度には新車の販売台数は347万台と、18年度に比べて3割落ち込むと予想しています。
今回さらなる効率化に踏み込むのは、事業環境の悪化が年々鮮明になっているためだ。総人口は08年をピークに減少が始まり、1台の車を複数の人が使うカーシェアリングの利用者は160万人を突破した。新車販売にはいずれも逆風になる。日本自動車販売協会連合会(自販連)は40年度の販売台数が347万台と、18年度に比べ3割落ち込むと予測する。
(引用3) 日本経済新聞 『車販社再編に第2の波 トヨタ系、相次ぎ合併(2020/2/10)』
その国内市場の縮小を見越して、販売店舗を減らしていく布石を今打っているのです。
2019年度に初の売上高30兆円を超えたトヨタ自動車が、将来を見据えてこの時点で販社のスリム化を図っているのは流石としか言いようがありません。
そして、これはトヨタ自動車とは直接関係はないのですが、国内の人口減少を受けて、日本経済の縮小が徐々に顕在化してきているなと感じます。
当然、日本経済の中でも今後伸びていく市場はあると思いますが、全体的に見ると日本経済は縮小していくのだろうと予想します。
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