マツダスタジアムのPFと広島投手陣のゴロ率

72試合終了時点で45勝26敗(勝率.634)とペナントレースを快走している広島東洋カープ。開幕前は黒田が引退した影響がどのくらいあるか懸念していましたが、昨年のドラフト1位岡田明丈・2014年ドラフト2位薮田和樹・2013年ドラフト1位大瀬良大地など若手投手の躍進が光り、ローテ―ションは黒田の穴を感じさせません。

マツダスタジアムのPF

さて今回はマツダスタジアムのPF(パークファクター)と広島投手陣のゴロ率についての話です。パークファクターとは、ある球場での得点や本塁打などの項目の数値が他球場と比べてどの程度偏っているか判断する指標です。球場ごとに大きさや形状、立地条件が異なるため各種成績が偏りが出ることが考えられるので、このような指標があります。数値が大きければイベントが発生しやすい、数値が小さければイベントが発生しにくい球場であることを意味します。

マツダスタジアムのPF

2014-17年までのマツダスタジアムのPFを見てみます。HRPF(本塁打パークファクター)は平均以下の年が多く、本塁打が出にくい球場だということが分かります。外野フェンス2.5mと低いですが、右翼100m左翼101m中堅122mはセリーグの球場では広い部類の球場になります。しかし広島のチーム本塁打数は

2014年153本(1位)

2015年105本(3位)

2016年153本(1位)

2017年76本(1位)6/31現在

となっており(括弧内はセリーグ本塁打数での順位)、本塁打が出にくい球場にも関わらず近年リーグトップクラスの本塁打数を記録しています。

一方、得点PFは平均的な数値なので、HRは出にくいが得点を取りずらい球場ではないみたいです。

広島投手陣のゴロ率

広島投手陣のGB%

次に広島投手陣のゴロ率を見てみましょう。ゴロ率とは、ファウルを除く打球(ファウルフライは含む)に占めるゴロ打球の割合のことです。実は広島東洋は、2014年から3年連続でゴロ率がセリーグ1番多い球団です(それどころか3年連続12球団で1番ゴロ率が高い球団です)。4年間の統計ですが、全体的に各球団ともゴロ率は近年上昇傾向にあるように見えます。

ご存知のように、マツダスタジアムは内外野天然芝で、マウンドと内野と外野の間だけ赤土です。天然芝は、ゴロ打球が失速しやすくイレギュラーバウンドも人工芝にしやすいため、内外野とも高い守備力が必要となります。

ゴールデングラブ賞を3度受賞した楽天の藤田一也選手も天然芝球場での守備の難しさについて語っています。

「前年までは全面人工芝だったので、大きな変化を感じましたね。一番変化を感じたのは、イージーバウンドが減ること。やはり人工芝でのプレーは優しいバウンドが多かったんだなということを痛感しました。人工芝から土のグラウンドになっただけでもイージーバウンドが減るのに、内野に芝生が張られていることで不規則なバウンドになる要因がさらに増える。」

 

また藤田選手は、ポジショニングの難しさにも言及していて、天然芝の部分でポジショニングをするとバウンドが変わりやすいため、土の部分で構えることが多くなり、必然的に深い位置で守備位置を取る機会が減り守備範囲が狭くなったと語っています。さらに人工芝に比べ、球足が遅くなって、深く守っていたら追い付けた打球も少なくなかったと口述しています。話が後先になりますが、この深く守って球足が遅い打球に追いつくことを可能にしたプレイヤーが菊池です。

ゴロ率の高い投手陣にゴロ処理が難しい天然芝。一見、相性が悪いように見えます。ここで、広島カープの内野陣の過去4年間のUZR1200を見てみましょう。

UZRとは、ミッチェル・リクトマンが開発した守備指標で、守備の貢献を同じ守備位置の平均と比較して得点化したものです。基本的な考え方はDRSと共通しており、打球を位置、種類、速度ごとに細分化した上で守備者のプレーが失点抑止にもたらした影響をプレーごとに計測していき、さらに失策や併殺完成、送球による失点抑止への影響を加算したものが最終評価となります。UZR1200とは、1200イニングあたりの守備での貢献度を評価したものです。

広島UZR

まず1Bから見てみましょう。このポジションは3年連続UZRがマイナスと、守備力をあまり求めていないことが分かります。今年の数値はプラスで、エルドレッドがとてもよく守っていることが分かりますが、基本は打撃重視ということが分かります。

次に2Bです。2Bは2013年から菊池涼介が守っています。彼はレギュラーになった年から4年連速でゴールデングラブ賞を獲得しています。NPB捕殺記録の上位3つを独占し、併殺においてもリーグトップを記録する守備職人です。UZRで見ても、毎年10点分防いでいます。天然芝独特の球足の遅いゴロを深く守ることで追い付くことを可能にしています。ゴロ率の高い広島投手陣を支えているのは菊池だと思います

3Bは基本的に内野の中でUZRを稼ぐポジションのひとつのようです。2014年はルーキーだった田中、2015年は梵が守っていましたね。2016年は中日から移籍したルナが守っていて、指標的には数値が落ちたのですが、今年から安部が守るようになってまたプラスに転じました

最後にSSです。2014年は梵から田中へSSが代替わりした年です。梵は肩が強く守備が上手かったのですが、膝をやってレンジがガクンと下がりました。そして今や押しも押されぬスタメンになった田中広輔がSSのレギュラーへとなっていきます。ちまたでは、弱肩と揶揄される田中ですが、レンジは広くUZRは2年連続プラス値です。とは言え、他球団のSSと比べて、強味になるかと言われると微妙なところです。

まとめ

・マツダスタジアムのHRPF(本塁打パークファクター)はリーグ平均を下回っているが、リーグトップクラスの本塁打数を記録している。

・広島の投手陣のゴロ率は3年連続リーグトップ。

・天然芝であるマツダスタジアムは、イレギュラーバウンドが起こりやすいが、打球の球足が人工芝に比べ遅いため、菊池のようなレンジ(守備範囲)が広い選手は、追いつける打球が増える。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。