【所感】敗者の生命史38億年【おすすめ】
本屋で出会った瞬間、「これだ!」と思った本があった。
その名も『敗者の生命史38億年』だ。
強いモノが勝者になるわけではない。変化しつづけるモノが勝者になるわけでもない。
生き残ったものが勝者である。
では何故、生き残れたのか。その謎をこの本は解いてくれる。
生物の「ニッチ戦略」
マーケティング用語で、「ニッチ戦略」というものがある。
ニッチ戦略とは、市場の隙間(ニッチ)を狙い、そこで相対的に優位なシェアを得、収益を上げる戦略のことである。
実はこのニッチという言葉は、もともと生物学で使われていた。
生物学では、ニッチは「生態的地位」と訳されている。(中略)生物にとってニッチとは、単にすき間を意味する言葉ではない。すべての生物が自分だけのニッチを持っている。そして、そのニッチは重なりあうことがない。もし、ニッチが重なれば、重なったところでは激しい競争が残り、どちらか一種だけが生き残る。
『敗者の生命史38億年』稲垣栄洋 PHP
No.1しか生きられない。これが自然界の鉄則である。
ニッチが重なれば、生き残りをかけた激しい競争は必須である。
そのため、なるべく戦わず自分だけのニッチを見つけるべく、生物たちは戦うフィールドをずらしていくのである。
裸子植物と被子植物
「マイソース」
これは中学生の頃、理科の先生から教えてもらった裸子植物の覚え方である。
マは松、イはイチョウ、ソはソテツ、スはスギである。
裸子植物は、固い皮で作られている種子を作ることで、シダ植物が果たせなかった乾燥地帯への進出を実現した。
裸子植物の後に誕生するのが、被子植物である。
裸子植物と被子植物の違いは、「胚珠がむき出しになっているかどうか」である。
胚珠がむき出しになっているのが裸子植物で、胚珠が子房に包まれむき出しになっていないのが被子植物である。
正直、中学生の頃はこの違いについてあまり気に留めていなかった。
しかし、この本を読んだあと、これがいかに革命的な出来事だったのか分かった。
何が革命的だったのか。
それは、胚珠が子房に包まれることで受精のスピードが格段にアップしたことにある。
裸子植物の受精はとてもゆっくりしている。
裸子植物の代表格で、春先に花粉で悩ませるスギも、受粉から受精するまで3カ月擁するのである。
なぜ受粉から受精までにこれほど時間がかかるのかというと、やってきた花粉を一度、取り込んでから胚珠を成熟させるためである。
裸子植物の胚珠はむき出しになっているため、成熟した卵細胞をいつまでも外の空気にさらしておくことはできないのだ。
被子植物は違う。
子房で守られているため、胚を成熟した状態で準備することができるのである。
そのため、受粉してから受精するまでの時間が圧倒的に速いのである。
この受精スピードを活かし、被子植物は世代交代を早くし、進化していくのである。
続きは『敗者の生命史38億年』で。
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