2020年1月20日にすかいらーくホールディングスが、24時間営業を全廃すると発表しました。
外食産業で営業時間を短縮する動きが本格化している。ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングス(HD)は20日、4月までに155店で実施する24時間営業を全廃すると発表。他の大手でも時短の動きが広がっている。サービスの大部分を人手に頼る外食産業には人件費の上昇や働き方改革などへの対応が急務。「24時間、年中無休」モデルからの転換が進みそうだ。
日本経済新聞『外食に時短圧力、すかいらーくが24時間営業廃止』
すかいらーくホールディングスと言えば、ガストやバーミヤン、ジョナサンをグループ傘下に持つファミリーレストランの最大手です。
有価証券報告で過去5年間の売上高・経常利益を見ても、堅調でした。【図1】
そんな会社が何故今までの店舗運営のやり方を変えたのか。
時短営業を行うのは、すかいらーくなどだけではありません。
同じ飲食業でいきますと、ロイヤルホストを運営しているロイヤルHDが17年1月までに24時間営業廃止。
日高屋を運営しているハイデイ日高やワタミも一部店舗で営業時間を短縮しています。
営業時間短縮の流れは、飲食業だけでなく、小売業にも浸透しています。
日本の小売業を牽引していたコンビニエンスストアは、2019年末から時短営業を受け入れる流れが加速しています。
コンビニのビジネスモデルの根幹だった24時間営業の原則が崩れ始めているのは確かだ。以前から希望する店に時短営業を認めてきたローソンでは、時短営業店舗が今年2月末の40店から、10月末には118店にまで増えた。セブン-イレブン・ジャパンは11月1日に全国の加盟店に時短営業のガイドラインを配布し、時短営業を認める条件などを通達した。同チェーンでは約230店が時短営業の実験中で、11月1日からは8店舗が正式に時短営業を開始している。
日経ビジネス「コンビニ3社『時短営業』を容認、本部の役割は変わるか」(2020年2月4日閲覧)
コンビニも業界全体で年々売上高が増加していた業界でした。
このすかいらーくなどの飲食業とコンビニなどの小売業が、今時短に踏み切っている大きな原因は人手不足と言われています。
日本は少子化なので、人手不足になるのは分かります。しかし、人手不足なら賃金を上げれば、人が集まるのではと思いませんか?
私は始め、そう考えていました。
ただこれって労働者側のロジック(論理)なんですよね。経営者(資本家)のロジックは、労働者とはまた別なんです。
経営者(資本家)のロジックは以下の通りです。
労働人口が少なくなる⇒
— ひさもと (@hisamoto_0) February 3, 2020
人件費が高騰する⇒
利潤最大化を満たすために、雇用する労働需要が少なくなる⇒
少なくなった人員でお店を回すため、営業時間を短縮して対応(24時間営業の廃止)
人件費が上昇すると、月々にかかるランニングコストが上昇します。
飲食業や小売業などのように、様々な会社が互いの反応を伺いながら、価格を決定する市場(不完全競争の市場)において、利潤最大化になる条件は「限界収入=限界費用」(MR=MC)です。
例えば、11時~14時までお店を開いていたラーメン屋さんが、更に1時間延長してお店を開いたとします。
この延長した時間でラーメンを作って売って、稼いだお金が限界収入です。
そしてこの延長した時間で、当然ラーメンの材料費や人件費が掛かりますので、この延長した時間で掛かる費用が限界費用です。
この限界収入と限界費用が等しくなるときに、利潤が最大化されます。
限界収入が限界費用よりも大きいときは、もっと生産量を増やそう(もっとお店を開く時間を伸ばそう)となります。
一方、限界費用が限界収入よりも大きいときは、逆に生産量を減らそう(お店を開く時間を減らそう)となります。今回、飲食業や小売業はまさにこれが起きています。
人件費が増加し、限界費用が限界収入よりも大きくなっており、利潤最大化するためには、限界費用を少なくする必要があります。
限界費用を少なくするには、人件費を削減しなければいけません。
人件費を減らすと当然雇える人数も減るため、今までより少ない人数でお店を回さなければいけません。
少なくなった人数でお店を回すためには、営業時間の短縮をしないといけない。
営業時間を短縮するなら、売り上げ高が低い深夜帯の時間を短縮しようという風になり、結果24時間営業が廃止になるというロジックです。
小売業や飲食業はどうしても店舗(場所)に縛られるから、日本だと人件費を落とせないよなあ。
— ひさもと (@hisamoto_0) February 3, 2020
製造業とかだと、人件費が安い海外で生産するという選択肢も取れるんだけど。
そして、このロジックは飲食業や小売業のような店舗(場所)に縛られる業界が中心になって問題になっていくと思います。
場所はどうしても日本が中心になっていまし(コンビニは違いますが)、どうしても日本だと人件費を下げられないですから。
これが製造業だと人件費の安い海外でモノを作るという選択肢も取れるのですが、こればかりは業界が違うのでどうしようもないですね。
おわり
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